この男、偽装カレシにつき
「なんでこんな真っ暗なの?
大丈夫だった?
チエ怖かったでしょ」


純ちゃんは私に駆け寄って、よしよしと頭を撫でてくれる。
うん、そうなの。
怖くて堪らな…。


…あれ?
そういえば。
暗闇が怖いことなんて、いつの間にか、すっかり頭の中から消え去っていた。


そうだ私、橘センパイにキスされて。
それにいっぱいいっぱいになっちゃって。
怖がるどころじゃなかったんだ。


私が恐る恐る橘センパイを見ると。


「ーーーそいつ、暗いのが怖いって、うるせーの何のって。
黙らせんのに苦労した」


橘センパイは私を見ながら大きいため息をついた。


そっ…、そういうことだったのね…。
キスしたわけじゃなくて、私を黙らせるため…。


なるほど、すっごい納得したわ。
そうじゃなきゃ、センパイが私にキスなんかするわけないもんね。
あんなにドキドキして損した気分だわ。
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