この男、偽装カレシにつき
しまった。
ゴージャスな家に夢中になって、お見舞いという本来の目的をすっかり忘れてた。


「珍しく風邪引いたっていうから、心配して顔見に来たんだよ」


橘家のリビング(広い!)に案内された後。
大野センパイがそう言いながらコーヒーテーブルにプリンやシュークリームなどのお見舞いの品を並べると、おぼっちゃまの機嫌はすぐに直った。
扱い易いヤツ。


「じゃあ俺らはこれ置いたら帰るけど。
チエちゃんはもう少しいるでしょ?」


しまった!
本来なら、二人きりにしてもらってありがたいところだけど、私たちに関しては余計なお気遣いは結構です!
大野センパイの優しさがこんなトコで裏目に出るとは。


「えーと…」


風邪がうつると良くないし、とか何とか上手いこと言って、私も帰っちゃダメかな。
なんて祈るように顔を見たのに。


「お前は残れ」


風邪っぴきのおぼっちゃまは、私だけを残して、大野センパイたちを帰してしまった。
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