この男、偽装カレシにつき
うおっ。
いつの間に電車が!


慌てて車内に乗り込む私に、まさかドジ専を疑われてたとは知らないセンパイは(そりゃそーだ)、眉間に皺を寄せる。


「恥ずかしいから扉に膝挟むんじゃねーぞ」


「そんな何度も挟みませんって!」


つーか、私の史上最大の失態を公衆の面前で暴露すんな!!


あんなの、人生で一回あるかないかの確率だっつーの!
狙ったって、なかなかできないんだから!


こんだけバカにするんだから、やっぱりドジ専ってことはないか。
なんて納得しながら、私はセンパイと並んで空いていた椅子に腰を下ろす。


プシュー。
気の抜けた音と共に扉が閉まりかけたそのとき、


「きゃあっ」


悲鳴にも似た叫び声とともに、私たちの後から電車に駆け込んだ女の人が、扉に膝を挟まれた。
< 186 / 499 >

この作品をシェア

pagetop