この男、偽装カレシにつき
歳は私よりきっと上。
落ち着いて見えるけど、相当抜けてるに違いない。


なんと!
私以外にもいたじゃん!
扉に膝を挟む人っっ!!


開き直した扉の前で顔を赤らめる彼女を見ながら、私はセンパイの腕をバシバシ叩く。


あれ、反応がナイ。
てっきり大爆笑すると思ったのに。


不思議に思って顔を見上げると、センパイは意外にも呆然と彼女を見つめていた。


「…橘センパイ?」


そう声をかけると、彼女がセンパイに気付いて目を見開いた。


「隼人くん…!」


嘘っ。
知り合い?


その瞬間、大野センパイの言葉が蘇った。


『雪乃ってチエちゃんにちょっと似てるんだ』


電車に膝を挟まれるくらいのドジ、そうはいない。
隣で固まったセンパイの様子が、疑惑を確信に変えていく。


まさか。
このヒトが雪乃なの…?
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