この男、偽装カレシにつき
「…感じのいいヒトですね、アヤさんて」


センパイの部屋で、甘ったるいコーヒーをご馳走になりながら私は言った。


見た目だけじゃなくて、きっと中身も素敵なんだろうな。
だってそうじゃなきゃ、この唯我独尊オトコがあんなに懐いてるわけないもんね。


私はほぼ二人の会話を聞いてただけなのに、彼女にがっちり心を掴まれてしまった。


「まぁな」


センパイの相槌が自慢げ。
何よその態度。
別にアンタを褒めたワケじゃありませんよーだ。


「しかも、電車に膝挟まれたの一緒だし。
なんか、ちょっと親近感」


せっかくいい気分だったのに、


「あのヒト、ああ見えてT大卒。
単なるドジのお前とは似ても似つかねーよ」


橘センパイによって、それはさらっと一蹴されてしまった。
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