この男、偽装カレシにつき
散らばった小銭をやっと拾い終えたあと。
アヤさんはもし良かったら一緒に、と言って私と同じテーブルについた。


「この間はどうも。
…それにしても、隼人くんにチエちゃんみたいなかわいらしいカノジョがいるなんて知らなかったな」


まだ慣れないセンパイのカノジョっていう響きに、なんだか背中がむず痒くなる。


「私こそ、またこうして会えて嬉しいです」


私が照れながら、いつもの癖でコーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れたのを見て、アヤさんが微笑んだ。


「隼人くんと同じ」


「え?」


思わず顔を上げた私に、アヤさんがルイボスティーを飲みながら続ける。


「砂糖四杯とミルクたっぷり」


そう言われて初めて、甘すぎるそれを飲むのが普通になってたことに気付いた。
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