この男、偽装カレシにつき
「駅まで送れ?」


放課後、教室に顔を出すなりそんなことを言った私に、橘センパイは不機嫌そうな顔をした。


「うん。
だって、傘忘れちゃったんだもん」


昼過ぎから天気が崩れて雨が降ってるけど。
傘がないってのは嘘。


天気予報をチェックしてきた私のバッグには、しっかり折りたたみ傘が入ってる。


カノジョだったら、これくらいのワガママ許されるでしょ?
私は、まるでセンパイを試すように返事を待った。


「無理。
これからバイトだ」


橘センパイは、残念でしたというように、舌をべっと出して言った。
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