この男、偽装カレシにつき
「またやりましたか。
橘センパイの悪いクセ」


センパイは他人のバッグに荷物を突っ込んで来る。
しかも返し忘れるとうるさいからタチが悪い。


私も以前、ヤツのケータイを家まで持って帰っちゃってシメられた苦い記憶がある。


「隼人のバイト先って、割と近かったよな」


大野センパイは足を止めると、くるっと向きを変えた。


「届けに行こっか」


場所が居酒屋だけに、センパイのバイト先に行くのは初めて。


ねぇセンパイ。
私さっき、大野センパイに告白っぽいこと言われたんだよ?
ちょっとは悔しがってくれる?


大野センパイと仲よさげに店に顔出したら、今度こそ嫉妬してくれるかな、なんて僅かな期待をしつつ。
私はヤツのバイト先に向かった。
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