この男、偽装カレシにつき
橘センパイはよく分からない。


もともと(色んな意味で)理解しづらいとこがあったケド、ちゃんと付き合い出してから特にそう思うようになった。


センパイはあんまり自分のこと話さないし、雪乃さんの件にしたって大事なところは分からないまま。


だいたい付き合うことになったって言ったって、橘センパイはあくまで暇潰しの延長なのかもしれない。


カノジョだったら、少しは心を開いてくれるかと期待してたケド。
結局私の思い上がりだったのかな。



相変わらずリッチなマンションの前で私たちは立ち止まる。


「あれって隼人…?」


大野センパイの視線の先には、見たことのある、シンプルなグレーの傘。


「あ、本当…」


橘センパイだ、と言おうとしたとき。
センパイの向こうに、もう一つ人影があることに気が付いた。
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