この男、偽装カレシにつき
「えーと…」


大野センパイはとっても優しいし、初恋の相手だし。
もちろん今も大好きなことに変わりはないけど…。


「えーとえーと」


私が言葉を選べないでいると、センパイはゆっくりと首を横に振った。


「いいよ。
今すぐ選べって言ったって無理でしょ。
だけど、もしそういう気になったら、いつでも俺んとこ来ていいから」


そう言って大野センパイは私の頭を優しく撫でてくれた。


橘センパイみたいに大きい手。
この手を選ぶことができたら、どんなに楽だっただろう。


駅まで送ってくれた後、大野センパイはもう一度私のことをギュッと抱き寄せると、


「じゃあね」


いつものように優しく笑って手を振った。
< 240 / 499 >

この作品をシェア

pagetop