この男、偽装カレシにつき
くそぉっ、純ちゃんめ。
自分は龍センパイと上手くいってるからって、なんて冷たい親友なの。


なんて恨めしそう睨んでいたとき、廊下が騒がしいことに気付いた。


ちらりと目をやると、何やら人だかりができてる。


人が落ち込んでるときにうるさいなー。
一体何の騒ぎよ。
私がムッとして廊下から目を背けたとき。


「チエ」


その人だかりの中心から、低くて不機嫌そうな声が聞こえた。


見なくても誰だか分かる。


だって。
私の胸をこんなに揺さぶる声の持ち主は、一人しかいないから。
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