この男、偽装カレシにつき
人だかりの原因は橘センパイだったのね、納得したわ。


でも何なの?
いつも名前でなんか呼ばないクセに。


どうせやましい気持ちがあるからでしょ?
そんなことしても、浮気の罪滅ぼしにはなんないんだから。


なんて、仏頂面をした私と目を合わせた途端、センパイはどこかへ向かって歩き出してしまった。


何それ!
ついて来いってこと?
偉そうにも程があるっつーの!


とはいえ無視することもできず、しぶしぶ立ち上がったとき、


「でもさ…」


純ちゃんがぽつりと言った。


「私が気付いたくらいだから、橘センパイだって気付いてたんじゃないの?
大野センパイのチエへの気持ち」


え…?


センパイの後を追う私の頭の中は、純ちゃんの言葉で再び混乱し始めた。
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