この男、偽装カレシにつき
「決め手、ねぇ…」


橘センパイは、私が新しい妖怪の名前を付けながら罵ってるとも知らず(そりゃそーだ)、私をじっと見ながら考え込む。


ちょっと、あんまり見つめないでよ。
こちとら男子に見つめられるのに慣れてないんだっつーの。


しかも何よ、その決め手がなくて本当に困ってるって顔は。
どうせ私は十人並みですよーだ。
顔面貴族のセンパイたちとは違って褒めポイントがありませんよーだ。


いじける私の横で、橘センパイはだいぶ悩んだあと、ようやく口を開いた。


「敢えて言うなら、電車の扉に膝を…」


その瞬間、私は橘センパイの向こう脛を思いっ切り蹴ってやった。
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