この男、偽装カレシにつき

この留守電を伝えたらセンパイはどうするの？


『彼がいないから、側にいて欲しい』


そんな風に言われたら、私を放って雪乃さんのところに行っちゃうかもしれない。


そんなの嫌だ。


少なくとも、今の今まで、私がセンパイを一人占めしてたんだもん。


やんちゃな笑顔も、手の温もりも、憎まれ口だって誰にも渡したくない。


「伝言を消去しますか？」


ケータイから聞こえる無機質な音声が、私の嫉妬丸出しの感情を揺さぶる。


雪乃さんは立派な大人だし。
いくら体調が悪くったって、一人で大丈夫でしょ。


センパイはまだ、雪乃さんから伝言があったことを知らない。


もし今伝言を消去して、『今日は帰りたくない』なんてかわいく言えば、きっとセンパイはずっと私の側にいてくれる。