この男、偽装カレシにつき
いやいやいやいや。
いくら私だって、これがポテコじゃないことくらい分かってるってば。


驚いてるのは、結局欲しいって言い出せなかった指輪がここにあるから。
しかも、センパイがそれを私の左手の薬指に嵌めたからだよ。


どうしよう。
未だかつて身につけたことのない光り物に、動揺して手が震える。


さすが恋愛マスター。
サプライズも完璧だよ、なんて涙が浮かびかけたとき。


「おかげでバイト代がふっとんだんだから、差額は身体で払えよな」


ヤツは指輪を顎で指しながら、その感動をぶち壊すようなセリフを吐いた。
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