この男、偽装カレシにつき
「映画はどうするの?
もう始まるのに」


そんなどうでもいいことは簡単に口にできるくせに、本心は言えない。


雪乃さんのとこに行かないで。
私の側にいて。


そう言わなきゃいけないのに、声にならない。


一生のお願いだから、雪乃さんより私を選んで。
なんて、心の中で叫んでも無駄だったみたい。


待っていたのは無情な言葉だった。


「どっちが大事だと思ってんだよ」


ため息混じりに言ったセンパイを見た瞬間、今まで何とか堪えていた気持ちがぷつりと切れた。
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