この男、偽装カレシにつき
「説明なんていらない」


私の言葉に、センパイは眉を潜める。


「私、知ってるから。
雪乃さんが初恋の相手だってことも。
まだセンパイは雪乃さんのことが好きだってことも」


「…お前それ、本気で言ってんの?」


センパイは思いっ切り不機嫌な顔で私を睨んで言った。


「…分かった。
付いてこなくていいから、お前はここで待ってろ。
いいな」


センパイはそう言い捨てて映画館を出て行った。


小さくなるセンパイの背中を見ながら、私は足元に崩れ落ちる。

本当に行っちゃった…。


既に浮気現場を目撃したことがあったのに、何を今さら傷付いてんだろう。


だいたい、あんなズルいことしておいて、選んでもらえるわけないのに。
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