この男、偽装カレシにつき
そのとき不意に、頬に冷たいものが触れた。


驚いて見上げると、真っ暗な空からちらちらと白い粒が舞い降りてくる。


「雪…?」


嘘っ。
これって、俗に言うホワイトクリスマスじゃん。


二股かけられて振られた今日に限ってこんなロマンチックな夜になるなんて。
私はどんだけツイてないんだろ。


ゆっくりと辺りを白く染めていく雪を見ながら。
ふと、あの寒がりなオトコが今頃どうしてるか気になった。


どうかアイツが寒さに震えていませんように。


あの黒いマフラーが少しでもアイツを温めてあげてますように…。


私は雪の中で、そう唱えて目を閉じた。
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