この男、偽装カレシにつき
「っ!」


次の瞬間、大野センパイが慌てて私の肩を掴んで体を離れさせる。


ものすごく嫌な予感がして、恐る恐る振り返ると。
玄関の扉から顔を出したまま、お父さんが凍りついていた。


おーい、父っ!
何でそんなとこにいんのよ!


よく見れば、足元には私がリビングに置き忘れたバッグが転がってる。


ああ。
忘れ物を持って追いかけてきたとこで、キス(未遂)を目撃して。
そんでもって、あまりのショックでバッグを落としたのね。


我が父ながら、なんつータイミングの悪さ。


「い、いってきまーす!!」


私はお父さんの足元からバッグを引ったくると、まるで逃げ出すように家を後にした。
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