この男、偽装カレシにつき
「寒いし、何か温かいものでも飲まない?」


大野センパイが、道路の向こうにある自販機を指差す。


「で、ですよねーっっ!
私、買って来ます」


動揺してるのを気付かれたくなくて、私は慌てて駆け出した。


またしても、うっかり橘センパイを思い出してしまった。


ていうか。
あんなヤツと一緒にするなんて、大野センパイに失礼こきまくりだっつーの!


自分に苛立ちながら、私は乱暴に自販機のボタンを押した。


ガコン。
軽快な音を立てて転がった缶を二つ抱えてセンパイの元へ戻ると。


ちょっと待ってよ。
離れたのはほんの一瞬だというのに、センパイは数人の女の子に囲まれていた。
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