この男、偽装カレシにつき
「大野センパイに憧れてる子もたくさんいるんですよ。
私だって、電車の中で一目惚れしちゃったくらい」


…って。
はっっ、しまった!!


電車のドアに膝を挟んだことは禁句なのに、うっかり関連ワードを口走ってしまった!!


「電車の中?」


大野センパイの澄んだ瞳が私をじりじりと追い詰める。


「えっと…」


「どっかで会ってたっけ?」


ダメだ。
こんな汚れのない瞳で見つめられたら、嘘はつけないわ。


私はガックリとうなだれながら白状する。


「…去年の入試の帰り。
電車のドアに(膝を)挟まれたのを、センパイに助けてもらったんです」


あーあ。
こんな恥ずかしすぎる過去、一生隠し通すつもりだったのに。
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