この男、偽装カレシにつき
そのとき。


「会いたくない…、だ?」


橘センパイが、眉を潜めながら思いっきり不機嫌な声を出した。


し、しまったーっ!
心の中でつぶやいたつもりが、うっかり声に出ちゃってたーっ!!


「いや、あの…。
会いたくないっていうか、顔を見たくないっていうか…」


「…お前、ケンカ売ってんのか?」


マズイ。
フォローするつもりが、むしろセンパイのボルテージを上げてしまった。
悪化させてどうすんの、私っっ!


動揺のあまり、橘センパイを見つめながら凍りついてしまったとき。


「そこまで」


不意に、大野センパイの手が私の視界を遮った。
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