この男、偽装カレシにつき
「フリーだって分かった途端、あの人だかり…。
相変わらず半端ないモテっぷりね、アンタの元カレ」


純ちゃんが牛乳パックのストローをくわえながら、橘センパイに視線を向ける。


「芸能界とか入れたら、ガッポリ稼げんじゃない?」


確かに。
あの無駄に整った容姿は、一般人として燻ってるには惜しいケド。


テレビの中でセンパイが微笑むのを想像しかけて、私は慌てて頭を振る。


「無理無理無理無理!
あんな愛想のないヤツ、お茶の間からクレーム来るって!」


第一、あのオトコが営業スマイルなんてするはずないし。
それに…。


「聞こえてんぞ」


熱弁を奮う私に、人だかりの中から橘センパイが突っ込んできた。
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