この男、偽装カレシにつき
「本当に腹立つよ、お前」


いつもより一オクターブは低いセンパイの声で、その怒りが激しいのだと悟る。


どうしてそんなふうに言うの?


だってそもそも、センパイが雪乃さんを忘れられないのがいけないんじゃない。


そのクセ、私と付き合ったりしたからいけないんじゃない。


私は浮気された被害者なのに。
センパイのために、身を引いてあげたっていうのに。


感謝されこそすれ、どうして叩かれなきゃいけないの?


「だけど、それ以上に腹立つのは…」


何も言えないでいる私の目を見ながら、センパイは大きくため息をついたかと思うと。


「それに振り回される、バカな俺だ」


そう言って私の唇にセンパイの唇を重ねた。
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