この男、偽装カレシにつき
センパイは親指の腹で私の涙を拭うと、まるで苦虫を噛み潰したような顔でつぶやいた。


「泣くほど嫌かよ」


え?


「随分と嫌われたもんだな」


センパイの辛そうな顔に、胸がざわついてくる。


どういうこと?
嫌われたもんだな、って何?


「分かったよ。
お前に執着すんのはやめる。
だからもう泣くな」


センパイは悲しげな顔で笑うと、私の頭をポンポンと叩く。


ちょっと待って。
何が分かったの?
執着するのはやめる、ってどういうこと?
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