この男、偽装カレシにつき
「ちょっと待って…!」


踵を返そうとするセンパイの裾を慌てて掴む。


こんな、スッキリしない状態で離れたくない。


センパイの気持ちを確かめないと。
自分の気持ちを伝えないと。
絶対に後悔する。


「何…?」


橘センパイのビー玉のような目が私を見つめた。


極度の緊張で逃げ出したくなるのを堪えながら、私は必死に言葉を紡ぐ。


「嫌なんじゃなくて。
私は―――」


やっぱり橘センパイが好きなの。
そう言おうとしたとき。


「チエちゃん!
そんなとこで何してんの?」


突然、頭上から聞こえてきた声にそれを遮られた。
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