この男、偽装カレシにつき
「何か言いかけたか?」


橘センパイがつぶやいた。


「ううん…」


私は溢れ出しそうな気持ちを堪えるように、唇を噛んで首を振る。


危ないとこだった。


橘センパイのことを、理性吹っ飛び過ぎだって責めたクセに。


大野センパイがいるのに橘センパイに告白しようとした私の方が、よっぽど悪質じゃん。


「アイツ、待ちかねてんぞ。
早いとこ行ってやれ」


橘センパイに急かされて、私はこくりと頷く。


早く行かなきゃ。


だって大野センパイは私の、偽装なんかじゃない、本物のカレシなんだから。
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