この男、偽装カレシにつき
「え…?」


呆然と声を漏らす大野センパイを見て、私は愕然とする。


何してんの、私。


部屋に上がり込んで。
その上、けしかけるようなことを言っておいて。
何、拒否ってんの?


「の、喉渇きません?」


私は慌ててセンパイから視線を逸らすと、テーブルの上のコーヒーカップを手に取る。


落ち着くのよ、チエ。


何を今さら、あんなヤツを思い出してんのよ。


あんな、人を掻き乱すだけ掻き乱しておいて。
結局他の女を選ぶようなヤツのことなんか考えるな。


いくら、好きでも。
いくら、欲しくても。


他の女を見てる相手を追いかけるような、不毛な恋はもう終わりにしなきゃ。
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