この男、偽装カレシにつき
連れられて入った家の中にセンパイの姿はなかったものの。
大理石の玄関も高級そうな家具も、以前見たまんま。


どうやら、扉の横に『橘』って表札が掛かってたのは幻ではなかったみたい。
となると…。


上質なソファーに腰掛けながら考えを巡らせてたとき。
さっきのイケメンがコーヒーカップを二つ抱えてやってきた。


そして、当然のように自分のカップに砂糖四杯とミルクをたっぷり入れたのを見た瞬間、ピンとくる。


「もしかして!
橘センパイのお兄さん?」


私が驚いて声を上げると。


「はじめまして」


お兄さんはまた、あの笑顔を見せた。
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