この男、偽装カレシにつき
指輪って。
もらったイブ当日に、捨てていいって言われた、あの指輪のこと?


「イヤイヤイヤイヤ。
私がもらったのは安物ですよ!」


私がブンブンと首を振るのを見て。
お兄さんは、まずった、と言うように口を押さえる。


そして少し考えるようにしたあと、私に向かって両手を合わせた。


「ごめん。
今の、聞かなかったことにして」


聞かなかったことにって言われても。
話が見えないんですケド。


でも、その表情から察するに。
もしかして。


「あの指輪、安物じゃないんですか…?」


私が恐る恐る聞くと、お兄さんは困ったように頷いた。
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