この男、偽装カレシにつき
「嘘っ!」


確かに、お坊ちゃまのクセにどうしてバイトなんかしてんだろうと思ってはいたケド。


「アイツがバイトしてたのって、まさか…」


私の言葉に、お兄さんはゆっくり私を指差した。


「私のためっっ?」


確かに思い返してみれば。
アイツは私に指輪を嵌めたとき、『バイト代がふっとんだ』なんて恩着せがましいこと言ってた。


すぐに安物だって訂正したもんだから、てっきり冗談だと思い込んでたケド。


だけどもし、それが冗談なんかじゃなくて。
思わず漏らしてしまった本音だとしたら。


訂正したのも。
『差額は体で払え』って言われて、ビビった私が指輪を外そうとしたからだったとしたら…。
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