この男、偽装カレシにつき
ガタン!
急に大きな音を立てて立ち上がった私を見て、お兄さんが目を丸くする。


「ごめんなさいっ!
私、大事な用を思い出して…」


外はもう真っ暗。
だけど、躊躇してる暇はない。


あの唯我独尊オトコがバイトしてまでくれた指輪。


確かに『もういらないだろ』とか、『捨てといて』って言われたケド。
本当に窓から放り投げちゃったなんて、シャレにならないよ。


私はバッグを掴むと、慌てて玄関へ向かう。


早いとこ見つけなきゃ。
あんな大事なものなくしたまま、アイツに顔なんか合わせられない…!


そんなことを思いながら、靴を履こうとしたその瞬間。


ガチャ。
扉を開けて現れたのは。
今度こそ本物の歩くエクスタシー野郎だった。
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