この男、偽装カレシにつき
「雪乃さんの彼氏って、お兄さんだったの?」


「何言ってんだ、今さら」


私の問いかけに、橘センパイは呆れ顔で答える。


イヤイヤイヤイヤ、初耳ですケドっっ!


だけど。
言われてみれば、カフェで雪乃さんに指輪を見せてもらったときに聞いた彼氏の名前は『マサト』だったかもしれない。


それに、お兄さんの婚約者なら、センパイが私にただのカテキョって説明したのを不満そうだったのも頷ける。


ということは。
雪乃さんがずっと一緒にいたって相手は。
砂糖4つとミルクたっぷり入れるクセの持ち主は、センパイじゃなくてお兄さんだったってこと?


「センパイって。
近い将来、お姉さんになる人と浮気してたの?」


それって数ある浮気の中でも、最悪のパターンじゃんっ!
なんて、とうとう核心に迫ったはずだったのに。


「…は?」


私を待ち受けていたのは、橘センパイのこれ以上ないくらい間の抜けた声だった。
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