この男、偽装カレシにつき
いつものテーブル席に座りながらさっき踏まれた財布を見てため息をついていると、後ろから声がした。


「うわ、足跡くっきりじゃん。
どうしたの?」


振り返ると大野センパイが立っていた。


わー。
その見目麗しい姿に癒されるわ。


さっきまでのへこんでた気持ちが一瞬にして消えちゃうよ。
我ながら単純なヤツだな、私。


「これは、買い替えだな」


龍センパイが財布を手に取ってしげしげと眺めたあと、そう漏らした。


やっぱりかー。
残念、気に入ってたのにな。
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