ダブル☆ラブ☆ゲーム
「何?柚月」



「つか呼び捨てやめてくんない?」



「なんで?じゃあ『ゆづっちゃん』がいい?」



真哉はわざとくだけて言ってみせた。



「何それ。ヤダよ。誰もそんな風に呼んで来ないし」



「ゆづっちゃん♪」



「真哉ッ!!」



「ははっ!ウケんなお前!」



須堂は人懐っこい笑顔を見せた。



見た目からは想像つかない程の屈託のない笑顔。



なんだ



こいつ



こんな風に笑うんだ



やっぱ意外と付き合いやすいかも。



「真哉ぁ~!!」



うちらが席で話していると



教室のドアから一人の女子が少し怒ったような口調で真哉を呼んだ。



見た事ないギャル。



違う棟のクラスかな?



「おーう!今行く!んじゃなっ!柚月」



そう言いながら私の頭をポンっと軽く叩くとそのギャルの方へと歩いて行った。



なんだ



いるんじゃん“彼女”



だよね。



見た目わりとカッコイイし明るいし



そりゃいるよね



ちょっとムカつく所もあるけど



思ったよりイイ奴っぽいし・・・



「ちょっと柚月ぃ~!
あんたいつの間に須堂と仲良くなったのぉ!?」



うちらが話し終わるのを待ってたミウ達が慌てて私の所へ駆け寄ってきた。



「知らない。なんか生物の時のアレ以来話しかけてくるようになって」



「すっごい。須堂見た目超ヤンキーじゃん?近寄れない雰囲気だよね」



「高1の時同じクラスだったけど、やっぱ一際目立ってたよ」



「でもカッコよくない?」



なんか今までうちらの中で須堂の事が話題になった事がなかったから



こうやってみんなから情報得るとなんだか新鮮な気がする。



「意外とイイ奴っぽいよ。つかさっきの彼女?」



「えー?知らない。でもアレ6組の佐伯梨乃だよね?」



「1年の時から一緒にいる所よく見るから彼女じゃない?」



「ホラっ!噂をすればっ!」



クミが窓の外を指さしたからみんなで身を乗り出して下を見ると



須堂と“佐伯梨乃”が並んで正門に向かって歩いてるのが見えた。



佐伯梨乃は楽しそうに笑いながら、須堂の服を引っ張る。



・・・ふぅん。



あれはどっからどう見ても付き合ってるね。



なんか気持ちがスッキリしない。



なんでだろう?



窓から帰っていく二人の後姿を無表情で見つめる私の髪を



気持ちのいい初夏みたいな風が撫でて行った。



この時はまだ夏の訪れと共に



私の生活にも新しい風が吹くとは



思ってもみなかった・・・。
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