ダブル☆ラブ☆ゲーム
「ゴメンネ愛斗。でもなんで降るって知ってたの?」



「実は携帯で天気見たら予報が変わってたから部室にある置き傘を持ってきた」



そう言って愛斗は傘を広げて見せた。



私は慌ててちょっと遠慮がちに傘の中に入った。



愛斗の傘は大きくて二人で入っても十分濡れない大きさだった。



でも少し見上げるとすぐそばに愛斗の顔があるからちょっと意識しちゃう。



いつも一緒にいるけど、こうやって密着して一つの傘に入るだけで



どこか別の人のように感じるのはナゼ?



「柚月濡れない?」



私があまりにも見てたせいか視線に気づいて愛斗が聞いてきた。



「うん大丈夫!私雨嫌いじゃないし」



「そうなの?」



「うん。雨のおかげで植物や木が潤されるからありがとうって感謝したくなる」



なんて冗談で言ってみたんだけど



「・・・・柚月らしいな」



柄にもなく何言ってんだよと言われるかと思ったけど



意外にも愛斗は納得した様子でいた。



「そうかな?」



「うん、本当に優しい子だね」



愛斗の中の私はどんな女なのか不思議に思ったけど



男の子にそういわれると思わず照れる。



でも愛斗の前でも梅雨早く明けないかなとか言わなかったっけ?



雨なんて巻きが取れるから大嫌いなのに



愛斗は一体私のどこを見てるんだろう?



「俺もそんなに嫌いじゃないな。雨に思いっきり打たれると気持ちいいし、雨の日の家はなんだか居心地いいし」



「あ、それは私もそう思う」



これは嘘じゃない。



それにしても愛斗は今時珍しいくらい繊細で真っ直ぐな心の持ち主だと思う。



一緒に話していると自分じゃ気づかなかった心の温かさというものを常に教えてもらってるみたいに思える。



真哉が愛斗の事心の洗濯機と言ってたのが今なら分かる気がするなぁ。





グイッ



私が愛斗の人間性を分析していたら



突然肩を抱かれた。



ビックリして顔を見上げたら



前からすれ違う人に当たらないように愛斗が誘導してくれた事に気づいた。



「あ、ごめんっ!つい…」



ぼんやりと見つめる私の視線に気づいた愛斗は慌ててパッと手を離した。


「私こそゴメン。ボーっとしちゃってた」



スゴイ。



あーゆー仕草を自然にできちゃうなんて、やっぱり愛斗も男の人なんだなって実感。



今までも誰とも付き合った事ないって言ってたけど、本当かな?



でも愛斗みたいな人が好きになる相手ってすごくいい子なんだろうな。



「愛斗って今好きな子いるの?」



思わずこんな質問をしてみちゃった。
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