SH-BA-RI
客引きの男●昌樹●
あたしの働く遊郭を仕切る男がいた。

男の名は、



昌樹 真一。



あたしはこの男に生理的に好意を持てなかった。



背は、あたしと同じくらいで高くはなかった。



全体的にガッシリとした体格に、自己主張の強い濃いカオ。


声は渋く、目に色気を感じる。



物腰は柔らかいが、どことなくあまり良い印象は受けていなかった。



挨拶以外は言葉を交わさず、



あたしは昌樹に距離を置いていた。



昌樹もそれには気付いていたはずだ。



そんな昌樹が、あたしに声を掛けてきた。



挨拶ではない。



『近頃、疲れているのか?』
『大丈夫か?』



と、



優しい流し目と、柔らかい口調で声を掛けてきた。



珍しい。
だから驚いた。



あたしは適当に受け答えをし、流した。


昌樹はその日以来、あたしによく声を掛けてくるようになった。



しかしあたしは、
心開くことなく、昌樹の“遊郭女を管理する義務の一貫”での仕事に対し、



そつなく対応し、



無愛想なままでいた。
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