Bitter Chocolate.
車から降りて、診療所の鍵を
開けて中に入ると、思ったより
暖かかった。
「 さっき出たばかりだから
まだ暖かいね 」
あたしの手を引きながら振り返った
綾川さんはそう言って笑うと
ストーブをつけて、その前にある
待合室のソファに腰を下ろした。
「 麗華ちゃん 」
「 ・・・・はい 」
「 旦那さんのこと、信じてるから
辛くなって逃げてきたって
言ってたけど・・・、それは
逃げた時点で何を表すのか
分かってるよね? 」
手を離されて、綾川さんの向かい側に
腰を下ろすと、あたしの中にあった
黒い部分を、綾川さんは簡単に暴いた。