MACHOCO
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「好きです、付き合ってください!」
「もちろんだよ、俺こそよろしく。」
真知子は目を見開く。
「嘘、夢みたい、私、本当にうれしくて!」
「俺もビックリだよ、まさか君に告白されるなんて」
そう、真知子もびっくりだった。
だって、彼(たかしくん)を呼び出したのは真知子で、
たかしくんに告白したのは真知子じゃない娘、ゆりこさんだからだ。
ゆりこさんとは知り合いではないが、たかしくんがそう呼んだので、ゆりこさんとさせていただく。
真知子はというと、物陰に隠れて息をひそめてまるで覗き見をしている娘だ。
しかし、真知子は覗き見したかったのではないと声を大きくして言いたい。
いや、本当に声を大きくして言いたいのはそんなことではないのだが。
真知子はたかしくんのことが好きだった。いや、現在進行形で好きだ。
そして、真知子は意を決して今日告白をしようとたかしくんを呼び出したのであった。
しかし、真知子が待ち合わせの場所に来たときには、すでに二人は向き合っており、
思わず真知子は物陰に隠れてしまった。
今となってはビビりな自分を激しく咎めるしかない。
「俺、ゆりこさんのこと、ずっと憧れてて。」
「私も、たかしくんのこと、ずっと気になってて。」
そんな真知子の存在を知らない二人は、おててなんか繋いじゃってこの場を去ろうとしている。
というか、たかしくんは真知子が呼び出しをしたということをすっかり忘れてはいないだろうか。
まぁ、思いを告げる前に返事を聞いてしまったような状態になった今、そんなことはどうでも良いが。