リセット
思考を一旦中断し、クローゼットの中から真新しい制服を取り出す。


淡い青のブラウスに黒い青と白のチェックのスカート。可愛らしい制服だ。


あまりスカートを穿かない私にとってこれを着るには少し抵抗がある。



しかし、これを着なければ学校にはいけないので仕方なく着る。



『……………』


困った。


制服を着たはいいが、最後のネクタイが締められない。ネクタイなど使ったことなどないから当たり前といえば当たり前だが。



仕方ないので、零にやって貰う。




部屋を出ると零はキッチンで朝食を作っていた。


スーツが汚れないようにエプロンまでして。はたからみれば気色悪い。



まぁ、顔がいいだけマシだが。


「おっ!着替えたか。もうちょっと待ってな、もうすぐ出来るから」


私は零の元まで歩み寄り、『ネクタイやって』と、赤のネクタイを零に無理矢理押し付ける。


「ん?………あぁ。ちょっと待ってな」


ガスコンロの火を止めてネクタイを受けとる。




そして、ネクタイをYシャツの襟に通してそのままグイッと零に引っ張られた。


目の前には零の胸板。ほのかに香水の匂いがする。


「……その格好で行くのか?」

『うん。隠す理由ないし』


私がこの容姿せいでいじめられないかと心配らしい。


今日から私は高校生。保護者代わりの零が心配するのも無理ない。



「なんかあったら言えよ?」


私から離れて、ネクタイを締めながら言う。

『平気。私、強いもん』

「そうだったな」


零は苦笑いを浮かべる。

『もう泣かない』

「本当に辛い時は泣けよ?」

『…………ん』

「っうし!出来た!制服似合うな。サラ」



屈託なく笑う零のその笑顔は私にはキラキラと輝いて見えた。



まるで太陽のように眩しい。



再びガスコンロに火をつけて、調理再開する零を後に私はキッチンを去った。リビングにある本棚から一冊の分厚い本を取り出す。



食卓に座って朝食が出来るまでの短い間それを読む。


これが私の日課。



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