406号室と405号室の2人。




「あ、あの…」


「あ?」


「へ、返事を…」


あぁ、そうだった…。

目の前にいるのに存在そのものを忘れてた。

この子のいきなりの告白であんなしょうもないやりとりを誠とするハメになったのに。

気づかれない程度のため息をつく。


「ごめんけど付き合うとか無理」


「…やっぱり今さっきの話が本当だから?」



名前も知らない女はチラッと誠に視線を向ける。

口に出して言えばいいのに…。


「誠が言った言葉?」


その質問待ってましたと、女は頭を縦に降って俺に返事をする。


「そう、正解。だから悪いけど無理」


「でも今さっきは否定したじゃないっ」


なんで会話すらしたこと無いのに必死になれるか分からない。
俺にそんなに魅力なんてないだろ。

本日2度目のため息。


「いつ否定した?」


「え…」

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