ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!
ひとしきり想定されていた質問が出た頃、一人の男性が手を挙げた。
明らかに周りとは違う週刊誌の記者風のよれたシャツを着た無精ひげの男。
「週刊スパイシーの牧山内です。相倉さんに質問なんですが、今回のデビューの件、喜びをどなたに伝えたいですか? お父様ですか?」
アタシはリンナからマイクを受け取る。
リンナは小さく、気をつけて、と言った。
「そうですね。父には伝えましたが、あまり喜んではくれませんでした。逆に今まで以上にちゃんと音楽に向き合えと言われました」
「さすがプロだった方は厳しいですな。ところで、お母様は? どちらにいらっしゃいます? このこと、お伝えしました?」
この記者がリンナの元事務所の記事を書いた張本人。
この会見自体がリンナに対して事務所関連の質問をNGにしていて、誰もそのことには話を振らなかった。
「母はアタシが産まれてすぐに家を出たので顔も覚えていません。どこにいるのかもわかりませんが、今回のことを喜んでくれればと思います」
だからアタシの身の上話でもネタにしようってことなんだろうか?
真実は正しいけれど、時に誰かを傷つける。
それはどんなことでも悲しい事実を明らかにするだけだ。
「お母様は今、何していらっしゃるんでしょうね? プロデューサーはご存じですか?」
突然話を振られた小塚マリコは司会者からマイクを受け取る。
「存じ上げません」
「今回のプロモーション、新人にかけるにはちょっと多すぎやしませんか。そのお金で母親探しなんてやったら注目度も上がると思うんですがね」
「彼女が望めば、検討いたします。ただ、そんなことをアナタは記事にしたいんですか―――?」
小塚マリコが言い放つと会場は張りつめたように静けさに包まれた。
「ワタシのことの方が記事にしたいんじゃないですか?」
沈黙を打ち破って、横からそう言い出したのはリンナだった。
アタシが持っていたマイクを奪ってその記者を指差す。
「今日は誰も質問してくれなくて。だから自分から話します。私、祥雲リンナは事務所を移籍してこのバンドで新たな道を歩き出します。乞うご期待!」
リンナのキャラにないことだった。
会場も呆気に取られていた。
「そ、それはリンナさん本格復帰宣言ということでいいですかね」
司会者の甘津谷ヨリがいち早く口を開くと雑誌記者が次々と質問を重ねた。
「それではお時間となりましたので二組にライブをお願いしたいと思います」
アタシ達ラズルダズルリリー、ラッドナクスの順番で行われたライブでアタシは二回もコードを間違えしまった。
緊張とは違う、何か別のモノがアタシの中にある。
母親のことを聞かれたからかもしれない。
今まで気にもしなかった母親の存在を急に押しつけられて、心のバランスが崩れたのかもしれない。
明らかに周りとは違う週刊誌の記者風のよれたシャツを着た無精ひげの男。
「週刊スパイシーの牧山内です。相倉さんに質問なんですが、今回のデビューの件、喜びをどなたに伝えたいですか? お父様ですか?」
アタシはリンナからマイクを受け取る。
リンナは小さく、気をつけて、と言った。
「そうですね。父には伝えましたが、あまり喜んではくれませんでした。逆に今まで以上にちゃんと音楽に向き合えと言われました」
「さすがプロだった方は厳しいですな。ところで、お母様は? どちらにいらっしゃいます? このこと、お伝えしました?」
この記者がリンナの元事務所の記事を書いた張本人。
この会見自体がリンナに対して事務所関連の質問をNGにしていて、誰もそのことには話を振らなかった。
「母はアタシが産まれてすぐに家を出たので顔も覚えていません。どこにいるのかもわかりませんが、今回のことを喜んでくれればと思います」
だからアタシの身の上話でもネタにしようってことなんだろうか?
真実は正しいけれど、時に誰かを傷つける。
それはどんなことでも悲しい事実を明らかにするだけだ。
「お母様は今、何していらっしゃるんでしょうね? プロデューサーはご存じですか?」
突然話を振られた小塚マリコは司会者からマイクを受け取る。
「存じ上げません」
「今回のプロモーション、新人にかけるにはちょっと多すぎやしませんか。そのお金で母親探しなんてやったら注目度も上がると思うんですがね」
「彼女が望めば、検討いたします。ただ、そんなことをアナタは記事にしたいんですか―――?」
小塚マリコが言い放つと会場は張りつめたように静けさに包まれた。
「ワタシのことの方が記事にしたいんじゃないですか?」
沈黙を打ち破って、横からそう言い出したのはリンナだった。
アタシが持っていたマイクを奪ってその記者を指差す。
「今日は誰も質問してくれなくて。だから自分から話します。私、祥雲リンナは事務所を移籍してこのバンドで新たな道を歩き出します。乞うご期待!」
リンナのキャラにないことだった。
会場も呆気に取られていた。
「そ、それはリンナさん本格復帰宣言ということでいいですかね」
司会者の甘津谷ヨリがいち早く口を開くと雑誌記者が次々と質問を重ねた。
「それではお時間となりましたので二組にライブをお願いしたいと思います」
アタシ達ラズルダズルリリー、ラッドナクスの順番で行われたライブでアタシは二回もコードを間違えしまった。
緊張とは違う、何か別のモノがアタシの中にある。
母親のことを聞かれたからかもしれない。
今まで気にもしなかった母親の存在を急に押しつけられて、心のバランスが崩れたのかもしれない。