ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!
その音楽専門学校に父親の勧めで入学したのが、アタシ。
事実を知らないままで通うことになったけれど周囲が親子だと知った上でこの事実を聞くと、どうしても特別扱いされているのではないかと憶測されてしまう。
アタシが知らなくも親同士はそれぞれに何か思うところがあっただろう。
しかし、周りから見ればアタシ達がデビューしたのだって優遇されていたんだと思われても仕方ない。
昔、アタシが小塚マリコに抱きかかえられていた頃を知る近所のヒトの証言も載せられていた。
地元に帰った小塚マリコは彼女の実家に戻ることはなく、マンションでアタシを育てていたが、今の写真館を増設された戸建ての家が完成すると、移り住むことなく父親とアタシを残して消えた。
そこからはアタシが知っている事実だった。
父子家庭で育ったアタシが中学の頃にシュウジ達『アンコンシャス・ブレイキング』と出会い、ギターをシュウジから教えてもらった。
そのことに関してはアンブレのコアなファンの恨みにも似たコメントが少し載せられていた。
それから今でもネットで公開されているアタシ達四人のライブ映像のこと。
あの頃のアタシ達はほんとうに下手だった。
今はやっと聞いてもらえるだけのレベルになったくらいだ。
それは自分達でも痛いほど理解している。
そんなアタシ達が、ラッドナクスとの勝負に勝てるんだろうか。
ダウンロードの結果がどうであれ、アタシ達はライブをしなければならない。
結果発表とライブの場所は夏にバンドコンテストがあった会場で、1500人を前にアタシ達は最強のパフォーマンスをできるだろうか。
「―――エル?」
昼過ぎ、日曜日のイベントの打ち上げで朝帰りだったカエデが眠そうに起きてきた。
「学校は………?」
「サボった」
「………何してんの?」
「え? ………引きこもり」
「まだ、引きずってんの?」
「引きずるだろ。会うこともないと思っていた母親が目の前にいたんだ。………もうどうしたらいいか………」
「そんなの関係ないだろ。エルはエルだし、母親は母親だよ」
「わかってる。わかってるけど………」
「だったらどうにかしてきなよ。引きこもってても何も解決できないだろ?」
いつになくカエデが優しくアタシに話しかける。
「そうだけど、こんなんじゃ歌えない―――」
「―――だけどだけどうるさいな!」
寝起きで機嫌の悪いカエデが水のペットボトルを握りしめながらキッチンの向こう側からアタシを見ていた。
「そんなんだったら歌わなくていいよ!」
アタシは思ってもなかったことに少し面食らっていた。
「エルだけのバンドじゃないんだ。ウチもミクもリンナもいる。少しはウチらのこと頼れよ。エルが弱気になってたら誰がウチらを引っ張って行くんだよ」
カエデは大きく息を吐く。
「ウチらはエルのこと、ちゃんと信じてる。高校の学祭の時だって。今だって」
「カエデ、ごめん」
「わかったなら、ちゃんと問題片付けてこい。エルらしく、ぶつかってきなよ」
「………そうだね。ちょっと、行ってくるよ」
「週末のライブには戻ってこいよ」
「わかった。リハには間に合うようにする」
部屋着を脱ぎ捨ててアタシは、気合いを入れるように完璧なメイクとコーディネートで部屋から出ていった。
事実を知らないままで通うことになったけれど周囲が親子だと知った上でこの事実を聞くと、どうしても特別扱いされているのではないかと憶測されてしまう。
アタシが知らなくも親同士はそれぞれに何か思うところがあっただろう。
しかし、周りから見ればアタシ達がデビューしたのだって優遇されていたんだと思われても仕方ない。
昔、アタシが小塚マリコに抱きかかえられていた頃を知る近所のヒトの証言も載せられていた。
地元に帰った小塚マリコは彼女の実家に戻ることはなく、マンションでアタシを育てていたが、今の写真館を増設された戸建ての家が完成すると、移り住むことなく父親とアタシを残して消えた。
そこからはアタシが知っている事実だった。
父子家庭で育ったアタシが中学の頃にシュウジ達『アンコンシャス・ブレイキング』と出会い、ギターをシュウジから教えてもらった。
そのことに関してはアンブレのコアなファンの恨みにも似たコメントが少し載せられていた。
それから今でもネットで公開されているアタシ達四人のライブ映像のこと。
あの頃のアタシ達はほんとうに下手だった。
今はやっと聞いてもらえるだけのレベルになったくらいだ。
それは自分達でも痛いほど理解している。
そんなアタシ達が、ラッドナクスとの勝負に勝てるんだろうか。
ダウンロードの結果がどうであれ、アタシ達はライブをしなければならない。
結果発表とライブの場所は夏にバンドコンテストがあった会場で、1500人を前にアタシ達は最強のパフォーマンスをできるだろうか。
「―――エル?」
昼過ぎ、日曜日のイベントの打ち上げで朝帰りだったカエデが眠そうに起きてきた。
「学校は………?」
「サボった」
「………何してんの?」
「え? ………引きこもり」
「まだ、引きずってんの?」
「引きずるだろ。会うこともないと思っていた母親が目の前にいたんだ。………もうどうしたらいいか………」
「そんなの関係ないだろ。エルはエルだし、母親は母親だよ」
「わかってる。わかってるけど………」
「だったらどうにかしてきなよ。引きこもってても何も解決できないだろ?」
いつになくカエデが優しくアタシに話しかける。
「そうだけど、こんなんじゃ歌えない―――」
「―――だけどだけどうるさいな!」
寝起きで機嫌の悪いカエデが水のペットボトルを握りしめながらキッチンの向こう側からアタシを見ていた。
「そんなんだったら歌わなくていいよ!」
アタシは思ってもなかったことに少し面食らっていた。
「エルだけのバンドじゃないんだ。ウチもミクもリンナもいる。少しはウチらのこと頼れよ。エルが弱気になってたら誰がウチらを引っ張って行くんだよ」
カエデは大きく息を吐く。
「ウチらはエルのこと、ちゃんと信じてる。高校の学祭の時だって。今だって」
「カエデ、ごめん」
「わかったなら、ちゃんと問題片付けてこい。エルらしく、ぶつかってきなよ」
「………そうだね。ちょっと、行ってくるよ」
「週末のライブには戻ってこいよ」
「わかった。リハには間に合うようにする」
部屋着を脱ぎ捨ててアタシは、気合いを入れるように完璧なメイクとコーディネートで部屋から出ていった。