ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!
「コーヒー、飲むか?」
「うん。ありがとう」
父親がキッチンでお湯を沸かしコーヒー豆を挽き始める。
アタシはカウンター越しのイスにすわってそれを見ている。
思えば小学生の頃までは父親がこうしてコーヒーをいれてくれるのをよく眺めていた。
中学に上がってからはほとんど見ることはなかった。
「久しぶりだね」
「ん?」
「コーヒーいれてくれるの」
「オマエが家にいるのが珍しいんだよ」
「そうだね」
アタシがそう言うと、父親は真剣な眼差しでコーヒー豆にお湯を注ぐ。
その音は優しくキッチンに響き渡る。
優しい音と香ばしいコーヒーの匂いに満たされて、アタシは改めて思った。
家族の奏でる音はこんなにも優しくて温かい。
あのヒトが奏でる音も優しくて温かかった。
「小塚さんと結婚したこと、………後悔してる?」
アタシが父親に聞きたいことはたった一つ。
それだけだった。
「後悔なんてしてねえよ」
少し笑って父親は言った。
「エルが産まれてきてくれたことも、離婚したことだって、何も後悔していない」
父親は温めていたカップにそっとコーヒーを注いだ。
「オレは、ずっと、―――幸せだった」
目の前に差し出されたカップの中で、コーヒーがゆっくりと湯気を昇らせる。
窓の外では11月の風が少し冷たそうに木々を揺らしていた。
アタシは何も言わずにそのコーヒーを口に含む。
コドモの頃には飲めなかった苦味の強い液体が静かに体に広がっていく。
「うん………苦いね」
「砂糖とミルク、入れるか?」
「ううん。このままでいい」
二口目のコーヒーは、アタシの体を暖めてくれる。
「エル。おっきくなったな」
三口目のコーヒーは、アタシの心を温めてくれた。
「―――お母さんにそっくりだ」
「………え?」
「お母さんとな、初めてデートした時、喫茶店で今のエルみたいに苦いの我慢して、コーヒー飲んでたんだ。知ってたか? お母さん、実はコーヒー苦手なんだ」
父親が語る初めての母親のエピソードは、その情景すら想像できた。
その様子を同じ空間で眺めているみたいに。
微笑み合う二人の姿。
「知らなかった。今度、話してみる」
「やめとけ。あとでオレが怒られるだけだ」
そう言って笑う父親は、無邪気だった。
つられて笑うアタシも、今まで考えていたことが全部ムダだったと思えるくらい、安心していた。
「うん。ありがとう」
父親がキッチンでお湯を沸かしコーヒー豆を挽き始める。
アタシはカウンター越しのイスにすわってそれを見ている。
思えば小学生の頃までは父親がこうしてコーヒーをいれてくれるのをよく眺めていた。
中学に上がってからはほとんど見ることはなかった。
「久しぶりだね」
「ん?」
「コーヒーいれてくれるの」
「オマエが家にいるのが珍しいんだよ」
「そうだね」
アタシがそう言うと、父親は真剣な眼差しでコーヒー豆にお湯を注ぐ。
その音は優しくキッチンに響き渡る。
優しい音と香ばしいコーヒーの匂いに満たされて、アタシは改めて思った。
家族の奏でる音はこんなにも優しくて温かい。
あのヒトが奏でる音も優しくて温かかった。
「小塚さんと結婚したこと、………後悔してる?」
アタシが父親に聞きたいことはたった一つ。
それだけだった。
「後悔なんてしてねえよ」
少し笑って父親は言った。
「エルが産まれてきてくれたことも、離婚したことだって、何も後悔していない」
父親は温めていたカップにそっとコーヒーを注いだ。
「オレは、ずっと、―――幸せだった」
目の前に差し出されたカップの中で、コーヒーがゆっくりと湯気を昇らせる。
窓の外では11月の風が少し冷たそうに木々を揺らしていた。
アタシは何も言わずにそのコーヒーを口に含む。
コドモの頃には飲めなかった苦味の強い液体が静かに体に広がっていく。
「うん………苦いね」
「砂糖とミルク、入れるか?」
「ううん。このままでいい」
二口目のコーヒーは、アタシの体を暖めてくれる。
「エル。おっきくなったな」
三口目のコーヒーは、アタシの心を温めてくれた。
「―――お母さんにそっくりだ」
「………え?」
「お母さんとな、初めてデートした時、喫茶店で今のエルみたいに苦いの我慢して、コーヒー飲んでたんだ。知ってたか? お母さん、実はコーヒー苦手なんだ」
父親が語る初めての母親のエピソードは、その情景すら想像できた。
その様子を同じ空間で眺めているみたいに。
微笑み合う二人の姿。
「知らなかった。今度、話してみる」
「やめとけ。あとでオレが怒られるだけだ」
そう言って笑う父親は、無邪気だった。
つられて笑うアタシも、今まで考えていたことが全部ムダだったと思えるくらい、安心していた。