ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!
母親の瞬間とプロデューサーの瞬間が交互に訪れる小塚マリコの車を見送りながらアタシは考えていた。





娘のカレシの心配をする母親の心境はどんなものだろうか。





母親の心境とは微妙に違うかもしれない。





どちらにせよ、シュウジに迷惑をかけるかもしれない。





すぐにはカエデのマンションへと帰る気にならなくて、近くの児童遊園に入りベンチに腰かけた。





少し夜の暗さに包まれた外灯の下は近くの家々から流れてくる夕食の温かい匂いに満たされていた。





シュウジに連絡しなければと思うほど心が締めつけられる気がする。





連絡してアタシはどうなるだろう。





また声が出せなくなるかもしれない。





小塚マリコから、母親から出された宿題はアタシの目の前で壁となって立ちはだかる。





どう考えたとしてもアタシはその壁に立ち向かうことができず、途方に暮れてただ立ち尽くしている。





ただ、電話をして少し話すだけだ。





それでも心の片隅に追いやった弱いアタシが首を振る。





「そんなんだったら歌わなくていいよ!」





父親に会いに行く前にカエデに言われたことを思い出した。





アタシのそばにはカエデが、リンナが、ミクがいてくれる。





だから、きっと大丈夫だ。





今日も明日も、あさっても、辛いことがあれば三人に甘えればいい。





この前みたいに一人で思い悩んで声が出なくならないように。





これから先も、ずっとずっとその先も。





「アタシがみんなを未来に連れていくんだ」





そう誓いながらアタシはメールを送る。





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