ギャルバン!!! 2nd The Re:Bandz!!!!
17. *Epilogue* In our song.
17. *Epilogue* In our song.






 薄暗い街のストリートでアタシはギターを持って立っている。





そしてそっと歌い出す。





「太陽すら眠れないそんな夜に、僕は君を連れ出しに行った」





アタシの後ろには、大きなモニタがアタシのシルエットを作っていた。





「希望を見失ってしまった君はトリカゴの天使、堕ちた僕は君を連れ去る」





アタシの隣には、リンナもギターを持って立っている。





「羽のない僕らは飛べない教室に閉じ込められた」





歌い出すリンナの声質がアタシとは違う響きを生み出す。





「僕らを縛るすべてを断ち切って、君を連れて飛び立つよ」





そのリンナを映すカメラがクレーンで高く上がる。





アタシ達がラッドナクスに負けたあのライブから半年後、リリースを夏に予定したラズルダズルリリーのファーストシングルのMV撮影は順調に進んでいた。





別日には地方の空港の滑走路で撮影する予定だ。





鬱蒼(うっそう)とした気持ちを吹き飛ばしてくれるような開放感のある楽曲だと監督が言っていた。





「はい! カット!」





カメラの向こう側にいた監督がモニタで映像をチェックしている。





「みんな! もう一回やってもらってもいいかな?」





いつも以上に気合いの入った顔で監督はアタシを見た。





「それからエル! 次はもっと感情込めてやってくれないか? さっきの表情は何だかつまんないって顔だぞ」





「はーい。わかりましたよー」





「それ、そんな顔してたぞ。もっと切ない感じでな」





と監督の相倉マサユキが、アタシの父親が言った。





「はーい」





アタシがむくれてそう言うと、リンナ達もスタッフも笑っていた。






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