王子様は囚われ王女に恋をする
「確か、イライザと言ったな?」

カイル王子に突然聞かれて、イライザは身を固くした。

「はい…」

「お前に聞きたいことがある」

スカイブルーの瞳は穏やかな光をたたえながらも
決して逆らえない威厳を感じさせた。

「あの日、お前はアリシアと城から逃げる予定だったな?」

カイルの言う『あの日』が
自分たちが捕まった日だというのは明白だった。

「は…はい」

「では、なぜまだ城内にいた?」

イライザは、あの日のことを鮮明に思い出していた。

「トーマス様が脱出を嫌がるアリシア様を気絶させ
そのまま抱えて脱出用の通路に向かいました」

アリシアたちはトーマスが城外まで逃がす手はずだったのだ。

しかし、その計画もうまくはいかなかった。

「通路の先は水路になっていて
そのまま川伝いに脱出できるはずだったんです。
でも、水路にあるはずの脱出用の舟がなかったのです」

「舟がなかった?」

「はい。気絶したアリシア様を抱えて泳ぐわけにもいかず
そのまま、そこで身を隠していたのでございます」

「それで捕まったというわけだな」

カイルの言葉にイライザはうなずいた。

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