王子様は囚われ王女に恋をする
イライザの言葉を聞いて
カイルはしばらく何か考え込んでいた。

「それでトーマス伯爵はどこへ行った?」

イライザはカイルの質問に答えた。

「トーマス様は私たちにそこで待つように指示され
広間へと向かわれました。そのあとの行方は分かりません」

「そうか」

自分の知っていることを
すべてカイルに話してしまったことをイライザは後悔し始めた。

そんな彼女の様子に気がついたのか
カイルはまっすぐに彼女を見て言った。

「心配いらない。悪いようにはしないから」

イライザの直感は敵国の王子にも関わらず
なぜかカイルを信じてもいいと告げていた。

カイルはそんなイライザから目を離すと
自分の傍らで眠るアリシアを見つめた。

途端に優しい光を宿した眼差しを見て
イライザは瞬時に悟った。

(まさかカイル様は…)

そう考えれば、捕虜としての自分たちが
なぜこんなに自由を与えられ大切にされているのか
すべて納得がいった。

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