王子様は囚われ王女に恋をする
「アリシア?」

アリシアは体を震わせて泣いていた。

「どうしてこんな目に合わせるんです?
捕虜だからですか?」

涙にぬれたエメラルドグリーンの瞳は
いつもより少し深い色に見える。

その瞳に吸い込まれそうな感覚に陥りながら
カイルは彼女の言葉を待つ。

「捕虜なら牢屋にでも閉じ込めればいい。
どうして舞踏会にまで出なければいけないの?
私を見せ物にしてそんなに楽しいですか?」

セナールに連れてきてから
アリシアはずっと気を張り詰めていた。
メルディアンの名を汚さぬようにと
精いっぱい振る舞っているのが伝わってきて
そばで見ていて痛々しいほどだった。

でも今、目の前で泣いている彼女は
傷ついて孤独に震える一人の少女だった。

カイルは静かに泣くアリシアを部屋に連れて行き
ソファにそっと下ろした。

泣きながら帰ってきたアリシアに
イライザが驚いておろおろしている。

「イライザ、温かい飲み物を持ってきてくれ」

「は…はい」

イライザが出ていくと
カイルはアリシアの横に腰かけた。

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