王子様は囚われ王女に恋をする
「アリシア、今日はすまなかった」

謝罪の言葉に驚いたのか
うつむいていたアリシアが顔を上げた。

「君を連れていったのは見せ物にするためじゃない。
僕が目を離したばかりに怖い目にも合わせて
すまなかったと思ってる」

カイルは彼女の頬に手を伸ばし
流れる涙をぬぐった。

「カイル様…」

「“様”はいらない。でもこれは命令じゃない。
名前で呼んでほしいんだ」

「え…?」

「今まで命令だと言ったのは
そうしないと君が言うことを聞いてくれないと思ったからだ」

冷たくなった細い手を両手で包むと
カイルはまっすぐにアリシアを見つめた。

「これだけは信じてほしい。
僕は君を捕虜だなんて思っていない。
君を傷つける気も、見せ物にする気もないから」

「カイル様、それはどういう…」

アリシアが言いかけたとき、イライザが戻ってきた。

「今日は疲れただろう。ゆっくり休むといい」

(これ以上ここにいるのは得策じゃない)

そう思ったカイルは
何か言いたげなアリシアを残して部屋を後にした。



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